ペニシリン耐性肺炎球菌に対する十分量のペニシリンによる治療 ペニシリン耐性肺炎球菌感染症にべニシリンは有効か?

摘要

"ペニシリン耐性肺炎球菌"は2つの理由で.看板に偽りあり.である.第1に.ペニシリンのみならず多くの抗菌薬に感受性が低下しており.ペニシリンだけに耐性を獲得したわけではないからである.欧米での一般的な呼称である"薬剤耐性肺炎球菌"がより的確な表現であろう.第2に"ペニシリン耐性"という表現はあたかもペニシリンが効かない肺炎球菌であるかのような印象を与えるためである.肺炎球菌のペニシリン判定基準は抗菌薬の移行性がもっとも悪い髄膜炎をもとに決定されたものであるため.抗菌薬の移行性の良好な肺炎や耳鼻科感染症では."ペニシリン耐性肺炎球菌"が起炎菌であっても.十分量のペニシリン（たとえばアンピシリン2gを12時間ごと.または1gを6時間ごと）で治療可能である.CDC(Center for Disease Control and Prevention)も肺炎においては肺炎球菌のペニシリン耐性基準を高めにシフトすることを提案している.あらたな耐性菌を生じさせないためにも.髄膜炎以外の肺炎球菌感染症にはペニシリンを第一選択薬として治療戦略を考えたい.