転写調節因子による血液細胞分化機構の解明に向けて: ES細胞の試験管内血液細胞分化誘導システムを用いたアプローチ

摘要

細胞の分化が進行する過程においては，細胞系譜特異的あるいは分化段階特異的な転写調節因子が中心的な役割を担っている．1個の未分化な細胞から10種類にも及ぶ分化した細胞が産生される造血システムも例外ではない．血液細胞分化における転写因子の生物学的機能の解析は，遺伝子ターゲティンクやレトロウイルスを用いた遺伝子強制発現などを用いて行なわれてきた．しかし，これらの実験では．転写因子の機能の一面しか解析することができない．マウス胚性幹細胞（ES細胞）から血液細胞への試験管内分化誘導と，外来性遺伝子の発現をコンディショナルに制御できるシステムを組み合わせることにより，遺伝子の発現を時間的に制御して発現させ，遺伝子の機能を詳細に解析することが可能になった．本稿ではこのシステムを用いた解析について．未分化な血液細胞に発現する転写因子GATA-2を中心に概説する．