地域医療と病診連携-'のりしろ'としての緩和医療-

摘要

緩和医療=がん末期，と思い浮かべてしまうのは仕方がないことである.緩和ケア病棟，そして緩和医療の殿堂（？）ともいえるホスピス一すべて末期がん患者の症状を緩和する，というイメージである.実際ホスピス病棟にはがん患者とHIV患者しか入院できない.しかし在宅ケアの現場では，すでにがん末期患者に限らず，病気や障害があっても住み慣れた自宅で，地域ですごしたいと願うすべての人々に緩和医療が提供されている.本特集はそういった緩和医療の固定概念から新しいステップへ，緩和医療の枠を広げようという試みである.いつの曰にか，ホスピス病棟に本当に緩和医療の必要な神経難病の患者がレスパイ卜入院でき，緩和ケア病棟でなくてもすベての疾患において初期から末期まで緩和医療が当たりまえに提供 され，それが病院という枠を越えて，施設へ，そして地域の在宅ケアの現場までシームレスに提供さ れるようになることを願う.どんな疾患のどんな痛みに対してもォピオイドを含め，あらゆる薬が当 たりまえに使用でき，すべての人がすべての疾患で，そしてすベてのステージで受けられる緩和医療. 表からはみえないが，裏ではきつちりと貼りつけて，はざまに落ち込みそうな難民を救ってくれる， そんな"のりしろ"のような緩和医療，緩和ケアを目指して.