漢方医学の歴史:臨床家が漢方医学の歴史をふまえることとは

摘要

漢方薬が保険収載されてから四半世紀あまり.誰でも漢方薬を処方することができるようになり,加えてエキス剤の登場によって広く臨床の場で漢方薬が用いられるようになりました.ごく一部でしか用いられていなかった頃は,漢方治療が大きく世の中の注目を集めるということはなかったはずで,その良さを認識している医師とそれを享受したい患者の間だけで漢方診療は行われていました.そこにそれぞれの思いがあったことは想像に難くはありませんが,だからといって何が良くてそれを選択しているかをいちいち世間に対して説明する必要もなかったでしょう.しかし,どこでも使えるという状況になれば, 「なぜ良いのか」 「なにが良いのか」 「どうして必要なのか」の説明は必然的に求められることになります.