イレウスを呈し大腸癌との鑑別に難渋した多発結腸憩室症の1例

摘要

近年，大腸憩室症は増加してきており，その原因として，食生活の欧米化による食物線経摂取量の不足や日常生活におけるストレスの増加，運動不足による肥満などが挙げられている．この憩室症の増加は欧米型の左結腸型ばかりでなく東洋型ともいえる右結腸型にも認められている．今回，われわれはイレウス症状で発症し，術前に大腸癌との鑑別に難渋した左側結腸憩室症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．2002年2月初旬から腹部膨満感が出現した．同年2月27日に当院の消化器内科を受診して内服などで様子をみたが改善せず，その際の腹部CT検査で下行結腸に腫十瘤性病変も指摘された．同年3月6日，腹部症状の改善がみられないためにイレウスの診断で当院の消化器内科に入院し，保存的療法で経過観察した．同年3月9日に経肛門的イレウス管を挿入したのち当科へ転科となった．