ICSIでの卵巣刺激周期から採取された未成熟卵子から得られた成熟卵の胚発生能の検討

摘要

GnRHa-hMGによる卵巣刺激周期に偶然採取された未成熟卵子の胚発生能を明らかにする目的で，体外成熟培養後にICSIを施行し，成熟率·受精率·分割率·胚盤胞発生率を検討した．対象は男性因子などの原因による不妊治療の目的で，顕微授精によるIVFを施行した57名（57周期）の患者である．GnRHa－hMG投与周期に採卵を行ったところ，385個の成熟卵子（MII期）の他に151個の未成熟卵子（GV期86個およびMI期65個）が採取された．これらの未成熟卵子を10％患者成熟卵胞液を含むTCM199液中で培養したところ，GV期卵子の69％，MI期卵子の86％が48時間以内に第1極体を放出し成熟卵子（MII期）となった．そこで，この体外成熟卵子のうち105個（GV期54個およびMI期51個）に対し夫精子を用いてICSIを行ったところ，89％が受精し，76％が分割（2細胞期）した．この受精率?分割率は，体内成熟卵子の受精率（83％）·分割率（82％）と同率であった．受精卵を6細胞期までPlmedium中で，その後7日目までG2.2medium中で培養を続けたところ，体外成熟卵子の8％（GV期由来卵子の4％，MI期由来卵子の12％）が胚盤胞まで発育した．なお，GV期由来卵子から得られた胚盤胞は，いずれも卵丘細胞を完全に除去せずに成熟培養を行った卵子から発育したものであった．今回のIVM－ICSIの検討により，卵巣刺激周期に偶然採取される未成熟卵子からでも胚盤胞が得られることが明らかとなった．