年齢因子によるARTの成績

摘要

生殖補助医療技術(Assisted reproductive technology ; ART)においては加齢に伴う妊娠率の低下が大きな問題である.そこで当院のARTにおける年齢別妊娠率,流産率などを後方視的に検討した.対象は1997年1月より1999年12月までに当院で行った通常の体外受精127周期,卵細胞質内精子注入法;342周期である.年齢を30歳末満, 30歳～34歳, 35歳～39歳, 40歳以上に分け採卵数,受精卵数,妊娠率,着床率,流産率を検討した.年齢別の平均採卵数は30歳未満, 30歳～34歳, 35歳～39歳, 40歳以上でそれぞれ13.3, 10.4, 8.0, 6.5と減少し,平均受精卵数もそれぞれ7.7, 6.4, 48, 4.0と減少した. IVFにおける受精率は年齢別にそれぞれ50.9%, 69.2%, 59.4%,74.1%採卵当たりの妊娠率は年齢別に36.4%, 37.0%, 18.8%, 13.6%であった.着床率は年齢別にそれぞれ30.4%, 19.3%, 9.8%, 6.4%で, 30歳末満と40歳以上で有意差を認めた. ICSIにおけるmetaphase II(Mil)卵当たりの受精率は年齢別にそれぞれ75.9%, 81-8%, 79:3%, 72.1%であった.採卵当たりの妊娠率は年齢別に52.1%, 35.4%, 34.2%, 10.6%,着床率は27.5%, 18.5%, 18.2%, 5.0%で, 40歳以上の群とそれ以外の群でいずれも有意差を認めた.また全体の流産率は年齢別にそれぞれ24.1%, 22.6%, 36.0%, 62.5%であった.年齢が上昇するにつれ,採卵数,受精卵数は減少し, IVFにおける妊娠率は35歳以上で減少傾向を認め,ICSIにおける妊娠率は40歳以上で有意に減少した.