冠状動脈バイパス手術における右胃大網動脈の有用性の検討一動脈グラフトのみを用いた症例群における右内胸動脈との比較－

摘要

1990年1月から1997年5月までの7年5カ月問に，動脈グラフトのみを使って2枝冠状動脈バイパス術（CABG）を行った100症例を対象とした．右内胸動脈（RITA）と左内胸動脈（LITA）を使用したRITA/LITA群38例と，右胃大網動脈（RGEA）とLITAを使用したRGEA/LITA群62例に分けて比較検討した．両群の患者背景ではRITA/LITA群で主幹病変症例が有意に多く（29％：13％），RGEA/LITA群で陳旧性心筋梗塞症例の割合が有意に多かった（77％:55％）?年齢はRGEA/LITA群で高い傾向が認められた（66.8(+-)8.5歳：63.9(+-)9.2歳）．性別，低左心機能症例，術前IABP使用症例，糖尿病症例，高血圧症例，脳血管障害症例，高脂血症症例，喫煙率，術前駆出率には差はみられなかった．手術結果では，RITA/LITA群で局所創感染発生率（24％：6％）ならびに局所創感染と縦隔洞炎を合わせた総感染率（32％：8％）が有意に高かった．またRGEA/LITA群で手術時間（443(+-)81分：405(+-)114分）が短く，胸水貯留率（29％：15％）の低い傾向が認められた．体外循環時間，大動脈遮断時間，出血による再開胸症例，縦隔洞炎による再開胸症例，術後IABP使用症例，術前駆出率には差はみられなかった．累積生存率と心事故回避率には有意差は認められなかった．以上の結果から，RGEAはRITAと比べて同等以上の有用性を持つグラフトであると考えられる．