認知症を有する大腿骨近位部骨折例への口腔ケアの有効性 周術期の肺炎ゼロをめざして

摘要

大腿骨近位部骨折の周術期において,誤嚥性肺炎究症 のため入院期間の延長や内科への転科を余儀なくされた という経験は,整形外科医にとつて決して珍しいことで はない.誤嚥性肺炎は『大腿骨頸部/転子骨折診療ガイ ドライン』によると,入院中の死亡原因となる合併症としてもっとも多く, 30-44%を占めるとしている.誤 嚥性肺炎の原因として,飲食中の誤飲 誤嚥は当然のこ とながら,睡眠中の唾液誤嚥が大きく関与しているこ とが知られている.口腔内は温度,湿度,栄養とい う点で細菌が繁殖しやすい条件が揃つており,ケアが不 十分であると口腔内は劣悪な環境に陥りやすい.特に認 知症を有するような高齢者の場合には,その傾向は顕著 であると推測される.本稿では,大腿骨近位部骨折のた め入院となった認知症を有する高齢者に対して積極的に 口腔ケアを導入することで,致死的感染症である誤嚥性 肺炎をどの程度,予防できたかを検討したので報告す る.