レビー小体型痴呆患者にみられる精神症状の特徴

摘要

レビー小体型痴呆(DLB)の8例で,抗パーキンソン病薬投与以前にみられた精神症状を検討した。 新皮質型と辺縁型の各1例については臨床経過を記載した。 精神症状は,人物と小動物幻視·錯視·変形視·実体的意識性·人物と場所誤認·カプグラ症状·重複記憶錯誤が特徴的であり,これらはレポドパ起因性精神病の精神症状と同一であった。 中脳-辺縁系ドパミン作動性神経系におけるドパミン受容体の過感受性がレポドパ起因性精神病の生成機序として推定されており,DLB脳において異質-扁桃核ドパミン作動性線維路の障害が示されている。 また,DLB患者では,機能画像を用いて後頭葉の血流低下と糖代謝異常が示されており,扁桃核は後頭葉の視覚野と相互線維連絡を有している。 以上のことから,異質-扁桃核線維路の障害が扁桃核におけるドパミン受容体の過感受性を引き起こし,視覚野-扁桃核線維路の機能異常を伴って,DLB患者に精神症状を生じることが推測される。