カチオン性薬物の血液脳関門輸送機構の解明をめざして：麻薬性鎮痛薬の受容体研究から血液脳関門研究

摘要

血液脳関門は中枢神経疾患治療薬の開発における最大の障壁となり，ほとんどの化合物は血液から脳へ移行しない．血液脳関門を透過し，脳内で作用を発揮する中枢作用薬には，麻薬性鎮痛薬，抗うつ薬，抗ヒスタミン薬をはじめとして数多くのカチオン性薬物が存在する．脳と血液との間の物質輸送を担う輸送体として，数多くのトランスポーターが血液脳関門において同定されているが，有機カチオンの血液脳関門輸送については不明なことが多い．私は現在，カチオン性薬物の血液脳関門輸送機構の解明をめざし，帝京大学薬学部薬物動態学教室の出口芳春教授のもとで研究を進めている．本稿では現在私たちが取り組んでいる研究について紹介させていただきたい．加えて，私が血液脳関門研究を始めるに至った経緯として，これまでに取り組んできた受容体研究についても紹介させていただきたい．