炭素短繊維を用いた広帯域吸収特性を有する多層型電波吸収体に関する実験的検討

摘要

本稿では，炭素短繊維を用いた多層型電波吸収体の広帯域化に関する実験的検討を行った．本吸収体は，同一平面上に導電性を有する炭素短繊維を一定間隔で配置し，スペーサを介して金属板を裏打ちした構造であり，周波数特性を持つ面インピーダンスから成るλ/4型等価回路として解析できることを確認している．まず1層型の吸収特性を測定した結果，炭素短繊維長さおよびスペーサ厚みを調整することで，整合の周波数および強弱を調節することが可能であり，最適化した場合には2つの整合周波数が存在し，その比帯域は96.6％であることがわかった．次に，提案したλ/4型等価回路を従続接続した2層型等価回路を用いて吸収特性を計算し，実測値との比較を行った．結果より整合周波数は概ね一致するものの，完全反射の点があることにより比帯域が非常に狭いことが確認でき，その要因として結合が発生している可能性が挙げられた．そこで，比帯域の更なる向上を図るために3層型吸収体を作製した．その結果，比帯域が164.％と改善され，更に吸収量が向上された広帯域特性を有する電波吸収体を実現した．