ヒト大脳皮質における円滑性追跡眼球運動のための視標運動予測に関連する領域の機能的同定

摘要

円滑性追跡眼球運動 (Smooth-pursuit eye movements，以後SPEM) のための予測的制御に関する脳活動を計測するために，被驗者25名に対して眼球運動とfMRIによる脳機能画像の同時計測を行った。 被験者は点灯したまま，あるいは点滅しながら正弘波状に滑らかに動く視標を追視した。 計測した眼球速度は視標速度に対して位相遅れがほとんどみられなかったことから，本実験で計測されたSPEMが予測的であることが確認された．fMRI解析結果から，サルFEF野とMST野に相当する領域において，視標点滅にもかかわらず活動が増加した。 この領域での活動は，正弦波運動しながら短期間視標が消滅する場合にも，視標に対して遅れることなくSPEMを持続させるための予測的な情報に関係していると考えられる。 また，1次視東野の特に中心窩を担うといわれる後頭極において，視標点減に伴う活動の減少がみられた。 この領域での活動は視覚入力に関係していると考えられる。