新第三紀堆積岩に対する低動水勾配での透水係数に関する一考察

摘要

動水勾配の小さい領域において，透水孫数が一定とならない非ダルシー的挙動を示すか否かについて新第三紀の堆積岩を対象に室内及び原位置で試験をするとともに,細孔径分布から非グルシー的挙動を説明するモデルを新たに導入し，非グルシー流れが発生する原因がビンガム流体的な挙動で説明可能かについて検討した。 その結果，低動水勾配時に透水係数が低下する傾向を室内で確認するとともに，原位置試験のスケールでも同様の性質が一部で認められた。 また，本研究で提案した，ビンガム流体理論を考慮したキヤビラリーモデルによる透水係数推定式により，透水係数の動水勾配依存性が空隙の壁面からの吸着力によるとする従来の説が成立するためには，全ての通水経路の中に少ない比率であっても間隙が非常に狭い部分が必ず存在していることが必要で，壁面からの吸着力を受ける空隙径の大きさや，その小さい空隙の連続性などの特性が特定の範囲にあれば，動水勾配の低下に伴い透水係数が低下する試験結果がモデルによって説明出来ることが分かった。 以上より，今回試験した新第三紀の堆積岩のように連続した割れ目の少ないインタクトな岩盤中の透水係数は，低動水勾配時に低下する可能性があり，遅い流速場での物質移行評価を行う際はこの点も考慮することが必要である。