風力を利用した海難救命用小型蒸留器の屋内実験

摘要

海難時において、飲料水の確保は遭難者の生存にかかわる非常に重要な問題であり、現在までに、海難救命用の海水淡水化装置として、手押しポンプを用いた逆浸透膜方式の海水脱塩装置が実用化されている。 この装置は軽量かつ小型であり、手動で操作されるため確実に飲料水を確保することができるという特徴を有する。しかし、人間1人当りの1日最低必要摂取量の約1.5kgの飲料水を得るためには、27～49Nの力で約1時間半の操作が必要であるため、特に遭難後期の体力を消耗している状態での使用は困難であることが予想される。 最近、太陽エネルギーを利用した海難救命用の海水淡水化蒸留器が提案され、日射量が22MJ/m{sup}2dayの晴れた日において、約15kg/m{sup}2dayの造水が可能であると試算されたことが報告されているが、いまだ研究段階であり、実用化には至っていない。 本研究では、風力を利用した小型海水淡水化蒸留器の蒸留性能を明らかにするため、本蒸留器の試作および屋内実験を行い、得られた結果を数値シミュレーション計算結果と比較·検討した。 なお、本研究では、蒸留器内部の回転軸の回転エネルギーが熱エネルギーに良好に変換されることを確認するため、風車の代わりにステッピングモータを使用して、回転軸を一定の回転数で回転させ、蒸留器は多重効用（蒸発·凝縮の過程が蒸留器内部で複数回繰り返させる）ではなく、単効用（蒸発·凝縮の過程は1回のみ）で実驗を行った。