太陽熱利用の歴史－古代ギリシャから現代そして未来へ 第10回 低温度差エンジン研究の黎明期

摘要

前回まで紹介してきたように，20世紀の石油時代は，化石燃料がふんだんに使えた時代であった．しかし，21世紀後半には，化石燃料が枯渇（こかつ）することが見えてきた。たとえば，ガソリンを燃やしてエンジンを回し，車を走らせることは，やがてできなくなる．すなわち，爆発的な燃焼は使えなくなる．そこで，筆者の研究室は，まず爆発に替わる“現象·原理”の探索からはじめた．いろいろ考えた末に，辿りついたのが，一定温度·圧力で体積が膨張·収縮する“相変化（Phase change）”であった．筆者は，1965年ころから，すでに，相変化の研究を種々行っており，下地はできていた．すなわち，凍結·融解，蒸発·凝縮，溶融·凝固，昇華，宇宙船の大気突入アブレーション（Ablation），加熱液体中の気泡の成長·崩壊，燃料液滴の燃焼や消炎などを含む，移動境界問題（Moving Boundary Problems：MBPs）の研究に没頭していた時期があった．