大型反射型天体望遠鏡用の超低熱膨張材料ULEガラスとZerodurガラスヤラミツクス

摘要

1948年（昭和23年）1月に完成し，その後半世紀の間世界最大級であったパロマ山のヘール望遠鏡の主鏡用のガラスの製作は，1934年（昭和9年）12月にコーニング社で行なわれた。 コーニング社は低熱膨張のガラスパイレックス·を用いて，当時世界最大の直径200インチ（約5m）の天体望遠鏡用ガラス円盤を鋳造した。 この時のガラス円盤製作にまつわる逸話は，文献1）に詳しいが，これが世界初の大型反射鏡用のガラスの鋳造法での製作であった。 このパイレックス製のヘール望遠鏡用主鏡の製作から60年の後，コーニング社は直径8．3mの世界最大級の主鏡用ガラスを，日本の国立天文台がハワイのマウナ·ケア山頂に設置したすばる赤外線天体望遠鏡用として製作した。 するすばる望遠鏡の主鏡材料のガラスには，パイレックスよりさらに熱膨張の少ないULE（Ultra LowExpansion glass，Code7971）が選ばれた。 超低熱膨張ガラスULEは，すばる以外の高性能の反射型望遠鏡にも広く用いられており，有名なハッブル宇宙望遠鏡や米国の8m級望遠鏡ジェミニもこのガラスを用いている。