光無線LAN用ビジョンチップとシステム適用－イメージセンサと高速光通信の融合

摘要

我々は，ビジョンチップを応用した小型かつ高速通信可能な赤外無線通信モジュールと，それを利用した屋内光無線LAN (local area network) システムの開発を行っている。 屋内光無線LANは，高速通信·施設の容易さ·秘匿性などの特長から注目されている。 この無線通信方式は，光の高い指向性と周波数（数100 THz），空間·波長多重性などを利用することにより，電波無線方式と比較して，高い情報の秘匿性，高速通信を提供できる可能性がある。特に，電波方式と異なり，周波数帯域割当の法規制がないため，広帯域通信が可能なことは大きな魅力である。屋内光無線LANは，光ファイバなどを必要としない無線方式であるため，有線方式と比較すると施設が容易である点は，電波方式と共通の利点である。 赤外無線通信の例として，ビル間光伝送では，数kmの距離で数100 Mbpsの通信速度が実現されており，1 Gbps以上の製品も市販されている。 屋内光無線LANでは100 Mbps製品が市販されている。 また，AV機器間リンクでは，2003年の時点で，日本ビクターが1.4 Gbpsの高速通信をデモストレーションしている。 屋内光無線LANは，メタル線，光ファイバ，電波などを用いた有線方式に対して上述の利点をもつが，いまだに大きな市場には成長していない。 これは，高速通信と，装置の小型化·低価格化の両立などの課題が残っているからであると考えられる。 また，光の高い指向性は，高いセキュリティと引き換えに，遮蔽物により通信が切断されるという不便さを生じる。 Gbps以上の広帯域無線通信方式として，赤外無線通信は魅力的な選択肢であり，課題の克服が望まれている。