建築基準法での限界耐力計算法における表層地盤の取り扱い

摘要

孜が国の建築物は，建築基準法関係規定に従って設計·建設される。 地震動に関わる構造計算規定は，許容応力度等設計と限界耐力計算の2通りがある。 この2通りの計算手法では，精粗は有るもののそれぞれ建築物の建つ当該表層地盤の震動特性を取り込むことが可能である。 特に後者の限界耐力計算は，工学的基盤において標準加速度応答スペクトルとして地震動が規定されているため，表層地盤増幅特性をより詳細に考慮·取り込むことが可能となっている。 この計算方法を適用する場合，地盤の層序，各層の単位堆積重量，せん断波速度等の地盤定数が必要なことから，当該地盤における地盤情報が整っているか，これらの情報が入手可能な地盤調査を行う必要がある。他方，限界耐力計算を手計算でもできるような簡略な手法とする必要性から，地盤震動特性評価の簡略化が導入され，結果として手法の適用性や精度に制限が加わらざるを得ない状況となっている。 地震動のレベルに関しても，既往の設計絹地震力との連続性を考慮するため，第二種地盤における昂を地震荷重と同等のものとして，標準加速度応答スペクトルのレベルはそれに合わせて規定されたため，解放工学的基盤での地震動に関する新たな知見が取り込まれていない。 さらに近年超高層建物など長周期構造物の地震応答問題で注目を集めている，深部地盤構造に関係する同期1秒から10秒程度のやや長周期帯域の地震動特性·振幅レベルは，工学的基盤において地震動を規定したことと既往の地域係数をそのまま用いていることから，高度化がなされなかった。 また，限界耐力計算に必要な表層地盤の定数を得るための地盤調査は，これまでも比較的規模の大きな建物の建設の際には地盤調査が行われているが，地盤震動特性の精度におよぼす地盤情報の重要性を考えると，より簡便でありながら十分な精度の得られるような地盤調査法が一般化することが望まれる。現行限界耐力計算に関わるこれら課題は，これまでに提案されている改良案や，近年豊富に得られている地震記録に基づいて，より合理的な設計鞘人力地震動を設定できるように改善されてゆくべきものと考える。