自己の内的テンポを考慮した二者間の協調的リズム生成のモデル化

摘要

本研究ではMatesによって提案されたDual Process Model (DPM)を基にして，基準となる自己の内的テンポを考慮した協調的な二者間リズム生成のモデル化を試みた．提案モデルを用いた計算機実験の結果，DPMに含まれる相手のテンポに追従する機構だけでは二者間の協調的リズム生成は再現されなかった．それは負の同期現象により内的タイムキーパの時間間隔が際限なく短くなるためであった．そこで，基準となる自己の内的テンポを用いた内的タイムキーパ修正機構を新たに導入し，他者との協調的リズム生成を再現した．また，基準となるテンポの差が刺激－反応時間間隔の二者間における差に影響している可能性を示した．以上の結果は，二者間の協調的リズム生成においては，単に他者に追従するだけではなく，自己のテンポを保持し，それに基づいて他者と協調することが重要であることを示唆している．