ヒルベルト変換と新たな外挿法を利用した遅延時間推定法

摘要

音響信号による距離計測や速度計測などを行なう際，物体からの反射波により遅延時間を測定する．っその一般的な手法として相互相関関数を用いるものがあるが，この場合，信号波形に反射特性に伴うひずみが生じ，相関関数のピーク値が必ずしも正しい伝搬遅延時間を与えるとは限らない．このような音響反射システムを，むだ時間プラス最小位相系として表わすことにより，むだ時間では信号の純粋な伝播時間を，最小位相系では固有の位相特性を表わすことができる．たとえば距離計測のひとつの例として，地表面の音響特性の測定など，試料の反射特性を測定する際，重要な問題となるのがその試料の境界面と観測点との正確な距離である．し、かしながら，草地や砂利地など境界面自体が不明確な場合では，視覚的に距離を決定することがきわめて困難である．このような境界面の位置決め問題に対して，本論文では音響的境界面は音響的に決定するという立場に立ち，音響信号にょるむだ時間推定（最小位相系のインパルス応答の時間原点推定）問題に帰着させている．