炭酸塩試料を用いた陸域での物質循環と第四紀気候研究

摘要

古気候·古環境復元は，将来の気候変動とそれに伴う環境変化を予測するうえで，重要な研究課題である。これまで，氷床コアやサンゴ，堆積物など，さまざまな古環境記録媒体によって，気温や海水温，降水量の長期的な推移が理解されてきた（例えば，Dansgaardet al.,1993；Meyers and Horie，1993；Felis et al．，2000）。氷床コアやサンゴなどの試料が極域や熱帯付近の海洋に分布するのに対し，石灰岩地帯で発達する陸成炭酸塩は，人口の密集する中緯度地域の陸域の古気候·古環境情報を記録する点で貴重な地質試料と言えるだろう。