有機金属化学の基礎から最近の進歩まで第1回有機遷移金属化学の基礎-化学結合の考え方

摘要

有機金属化合物とは，"金属-炭素間結合を持つ化合物"の総称であり，その周辺の化学も含めた化学を有機金属化学という.有機金属化合物は，ビタミンB_(12)補酵素など自然界に存在するほんの少しの化合物を除き，天然には存在しないが，多くの触媒反応や有機合成反応における有用な反応試剤または中間体として知られている．有機金属化合物の歴史は意外と古く，1827年にはエチレンが白金に配位した錯体Zeise塩が合成されている．有機金属化学が注目され始めたのは，チタン-有機アルミニウム混合系のZiegler－Natta重合触媒やシクロペンタジェニル環の面で鉄に結合したフェロセンの発見を契機としていると言われている.