自動車用インジェクタの燃料噴霧·混合気一貫解析

摘要

自動車エンジン内の燃流噴霧はマルチスケールの流動で構成される。すなわち、噴孔近傍では数百ミクロンの液膜が数十ミクロンの液滴へ分裂し、その後、数十から数百ミリメートルの空間の空気流動により混合気が形成される。このような燃料噴霧を解析するためには、噴孔近傍の液膜分裂挙動と大気領域の混合気挙動を一貫して解析することが必要である。従来、噴孔近傍の液膜分裂挙動は、界面追跡法（VOF (Volume of Fluid)法[1]、Level set法[2]、CIP (Cubic Interpolated Propagation)法[3]、etc.）により解析が行なわれてきた。一方、大気領域の混合気挙動は離散液滴法（DDM (Discrete Droplet Model)法）により、液滴を球形とみなし、液滴の初期粒径、初期速度、噴霧時刻が同一とみなせる液滴群を一つの液滴として解析してきた。ここでは、噴孔近傍の液膜分裂解析を、混合気解析の噴射条件として使用する代わりに、実測や予測式が使用されてきた。この手法は有用な成果を挙げてきたが、更なる予測精度向上のためには、噴孔出口近傍の液膜分裂挙動の情報をより詳細に反映した、混合気解析が必要となっている。本研究では上記の燃料噴霧·混合気一貫解析技術を多孔式インジェクタと衝突式インジェクタへ適用し、実測結果で検証を行なった。更に噴孔近傍の液膜分裂解析から混合気解析へ結合する際の噴霧情報（粒径分布、流速分布）が、噴霧形状に及ぼす影響について検討を行なった。