玄界灘のマアジ漁場形成に及ぼす対馬暖流の影響

摘要

玄界灘の漁海況を論ずる上で重要な要因である対馬暖流 は，長期にわたる海洋観測が継続して行われ,研究が積み 重ねられてきたが，対馬暖流が玄界灘の沿岸漁業に及ぼす 影響に関する報告はこれまで非常に少ない.そこで，玄界 灘の沿岸漁業の重要種であるマアジ(Trachurusjaponicus) を対象に対馬暖流の流動変化が漁場形成と及ぼす影響につ いて検討を加えることを目的した. 1977-2005年に玄界灘を漁場とする中型まき網漁船が所属 する漁業協同組合の仕切り書（水揚量の記録）と2000-2005年の玄界灘で操業した中型まき網漁船の日別操業記 録を用いた.日別操業記録は，操業海域を緯度経度2分ご とのメッシュに区分した区域を漁区として設定し，記録を 依頼した.各漁区の中央点の緯度経度を漁獲位置として解 析に用いた.漁場位置の離接岸の状況を把握するため，九 州北岸の入り組んだ海岸線の平均的指標として，基準線として設定した（図1).