国際宇宙ステーション実験による 植物の抗重力反応機構の解明

摘要

植物は約5億年前のォルドビス紀に30数億年間過ごし た海を離れ，他の生物に先駆けて陸地に進出した.以後,. 陸上植物として飛躍的に進化し，繁栄を遂げてきた.こ の進化上の大転身を可能にしたのは，陸上で遭遇するさ まざまなストレスに対する抵抗，適応能力の獲得である. とりわけ，1Gの重力に抵抗することは必須の過程であ り，植物は体の構造や機能を劇的に変ィヒさせてこの困難 な課題を克服してきたこのように，重力に対する抵 抗反応は，植物の進化を支え，また進化の結果として誕 生した陸上植物を特徴づける重要な生理機能である.し かし，今までの重力植物学や宇宙植物学の研究は，重力 屈性に代表される重力形態形成に関するものがほとんど であり，重力に対する抵抗のような他の重力反応の存在 はきちんと認識されていなかった.そこで筆者らは，こ れを「抗重力反応（gravity resistonce)」と名づけ，その実態や機構の理解をめざして研究を進めてきた 地上 では，主として遠心装置を用いる実験により，過重力に 対する抗重力反応の基本的なしくみを明らかにした.最 近，筆者らは，欧州宇宙機関（ESA)のコロンバス実験 棟において，抗重力反応機構をさらに解明するための宇 宙実験（Resist Wall)を実施する機会を得た.本稿では， Resist WaU実験の意義，目的，経緯，および成果につい て述べるとともに，「きぼう」実験棟において実施する次 の宇宙実験の概要についても紹介する.