希薄硝酸水溶液処理によるアロフェソとイモゴライトの構造変化およびアルミニウムとケイ素の溶出

摘要

土壌環境に与える酸性雨の影響評価において，粘土成分の特性、構造変化の問題ほ重要であるが，過去の研究例は少ない．本研究では，低結晶性粘土成分であるアロフェンとイモゴライトが，希薄硝酸水溶液との接触によって受ける化学的変化を，結晶性層状ケイ酸塩粘土鉱物との比較で調べた．溶出したAl，Siの量ほ，イモゴライト＞Si／Al比の低いアロフェソ＞Si／Al比の高いアロフェソ，の順であった。 赤外吸収スペクトルから，とくにイモゴライトにおいて，ギブサイトシートにオルトケイ酸が結合した構造の部分が変化を受けやすいと推定した．分子軌道法計算から，イモゴライト（直径2nm）ほアロフェソ（直径5nm）よりも構造的に不安定であることが示された．一方，モソモリロナイト，カオリナイト，ハロイサイトでほAl，Siの溶出量は小さく，硝酸処理前後の赤外スペクトルにもほとんど変化は認められなかった．硝酸に対する各粘土成分の安定性の序列ほ，比表面積，化学構造の骨組みの安定性等に起因すると推定した．アロフェソおよびイモゴライトが結晶性粘土鉱物よりも硝酸溶液に溶けやすく，その化学構造も変化しやすいことは，これらを主要粘土とする土壌では，酸性雨による粘土コロイドの崩壊や変質がとくに深刻な問題となることを示唆する．