農耕地土壌における微生物群集構造解析のための分子生態的手法の開発

摘要

土壌中には高い密度で多様な微生物が存在し，作物の生 育に重要な役割を果たしている.土壌微生物は群集として 物質循環など土壌環境の維持に重要な役割を担っており， また，土壌病害の発生には病原菌以外の微生物群集も影響 を与える.しかし，農業現場における土壌診断では，土壌 の物理性及び化学性が調べられることが多く ，生物性に関 する幸艮告は限られていた..その原因には生物性を検討するための手法における問題 点があげられる.現在までによく用いられてきた土壌微 生物の調査法には，希釈平板法を用いた培養、分離による ものがある.しかし近年，環境中に存在する微生物の大部 分は現在の技術では培養が困難であり，平板法では微生物 相のごく一部しか評価することができないことが明らかになってきた.一方，環境中から直接DNAを抽出し，微生 物群集を解析する分子生態的手法の登場により，環境中の 培養困難な微生物の解析が可能になりつつあった.しかし， 土壌へ分子生態的手法の適用に際しては，DNA抽出法な ど実験技術上の問題点がいくつか残されていた.