他感作用の検定法の開発と他感作用候補物質の同定

摘要

筆者は，1981年に農業技術研究所に入所して以来，1983年農業環境技術研究所，1992年四国農業試験場，1995年農業環境技術研究所と3回の移動を経験したが，上司、同僚、共同研究者に恵まれ，一貫して，他感作用（アレロパシー）の検定手法の開発，他感作用の強い植物の検索，作用物質の解明，他感作用の強い植物を用いた実用的な植生管理、雑草制御法の開発に関する研究を行うことができた．この間，マメ科緑肥作物ムクナ（Mucuna pruriens）の研究で京都大学から学位を頂き，転勤先の四国農試では，ムクナの近縁種であるヘアリーベッチ（Vicia villosa）の実用化試験を行い，再度戻った農環研ではヘアリーベッチや他の他感作用が強い被覆植物等の検索と作用物質の同定に関する研究を行い，幸運にも農水省の研究プロジェクトや競争的資金プロジェクトに採択され，研究を継続して幾つかの他感物質を同定することができた．ムクナは熱帯性であり，イネ科雑草を十分に抑制できないので，日本では普及していないが，中南米やアフリカで緑肥作物として普及しつつある．ヘアリーベッチは，県の農業試験場や農家で追試され，現場でも実用性が高いことから，全国の休耕地管理や果樹園管理に普及しつつある．その作用本体ほ不明であったが，最近，化学肥料である石灰窒素の成分として知られるシアナミドであることが判明した．ムクナやヘアリーベッチのような他感作用が強く実用性の高い植物を見出せたことは幸運の賜で，内容は浅く，今後更に研究が必要であるが，これまでの研究概要を紹介する．