土壌中の遺伝子，遺伝子情報…何ができるのか，何がわかるのか5．土壌微生物の群集構造解析（その1）DGGE，原理と畑土壌への適用

摘要

微生物群集構造の評価に関する研究が遅れている原因として，土壌微生物においてほ種の同定が極めて困難なことが挙げられる．つまり，動物や植物であれば肉眼での形態観察により，ある程度種の識別，同定が可能であるが，微生物の場合ほ顕微鏡を用いなければならず，その分労力を要する．さらに細菌では形態的特徴が乏しいた鋸こ，顕微鏡で詳細に観察したとしても種レベルどころか属，科といった識別も不可能である．また，コリネフォルムのarthrobacterと球菌のMicrococcusが系統分類的には極めて近縁であるなど，形態的な差異が系統関係に反映されないケースもある．こうした困難さを打破するために，微生物に存在する化学種（DNA，リソ脂質脂肪酸，呼吸鎖キノンなど）をバイオマーカーとして，それらの種類や組成から微生物群集構造を評価する試みが1990年代に入って急速に進展した．