サクラマスの生活史と日本海裂頭条虫の寄生について

摘要

海産のサクラマスには、日本海袈頭条虫の幼虫（プレロセルコイド）が寄生していることは、Ijima（1889）によって最初に明らかにされた。 この条虫はYamane et al（1986）が別種とするまでヨーロッパに分布する広節裂頭条虫と同じ種とされていた。 ヨーロツバの広節裂頭条虫の幼虫は、一般的な淡水魚に寄生が認められていることから、我が国においても淡水環境で養殖されるニジマスなどがヒトに対する感染源として疑われたことがあった。 著者が北海道の内水面養殖の調査、研究および指導などに当っている北海道立水産膵化場に勤務している頃、当時、餌斜にアスタキサンチンなどを配合して海産のサケマスと変わらないサーモンピンクを呈する肉質のニジマスの生産が可能となり、道内の主要な養殖場から大手スーパーマーケットに刺身用に出荷する商談が持ち上がった。 当然ではあるがその安全性の証明が必要になり、数少ない安全性を強調する文献調査と小規模な検査結果で対応しなければならなかったが、この間題は全国的にも重要になり、全国養鱒技術協議会（1986、1988、1991）で養殖ニジマスの検査を行い、いずれも陰性であることを報告している。