シンポジウム記録魚介類生産の場としての浅海域の生態系サービス: I-2.魚類生産

摘要

ある生息場における魚類生産を評価する際に，面積あ たり漁獲量，水揚げ金額等は洗用的な指標である。しか しながら，魚類生産のプロセスや各生態系の貢献度を定 量的に評価した事例は非常に少ない。たとえば，湾全体 での年間漁獲量を評価することは比較的容易であるが， その湾に藻場，干潟，砂浜域，岩礁などの異なる生態系が混在する場合，各生態系の魚類生産への寄与を評価す ることには困難が伴う。これは，魚類の多くの種が高い 移動能力を備え，複数の生態系からエネルギーを得てい ることに起因する。また，魚類生産の大部分は生態系サービスのうち資源供給サービスとして評価されてきた が，資源としては直接有用ではない魚類の間接的貢献 (有用種の餌資源として等）や他サービスとの複合的貢 献（文化、調整サービス）などのようなものも存在する(生態系サ一ビスについてはMillennium Ecosystem Assessment 編 2007" 等 を 参照）。 本シンポジウムでは，魚 類生産の定量的評価手法に関する歴史と現状を概説する とともに，将来における浅海域生態系の効果的な保全に むけた課題について議論した。