ラットの中大脳動脈閉塞モデルに対ずる外内套付き塞栓糸を用いた脳虚血耐性の誘導効果

摘要

複数回の非致死的短時間虚血を行うための新たな塞栓糸を開発し，虚血耐性発現に必要な時間的条件をラット脳にて検討した。 虚血前処置（PC）としては，10分間の左中大脳動脈閉塞を60分間隔で3回線り返した。 その後，致死的脳虚血（100分間の左中大脳動脈閉塞）をPC後1日，3日，5日そして7日の間隔で行つた。 梗塞体積，腫脹率で評価した虚血耐性の程度を非PC群と1日，3日，5日そして7日間隔群で比較した。 PC後3日，5日そして7日間隔群では，非PC群より有意に梗塞体積が縮小した（p＜0．01，VS．3日そして5日間隔群；p＜0．05，VS．7日間隔群）。 さらに，PC後3日そして5日間隔群では，非PC群より有意に腫脹率が抑制された（p＜0．01 VS．3日間隔群，p＜0．05 VS．5日間隔群）。 以上，PC後3日から7日の間隔で虚血耐性が誘導され，その効果は，梗塞体積に加え腫脹率も抑制した。 最後に，本塞栓糸は効果的なPC発現のための中大脳動脈の梗塞，再濯流の繰り返しが可能であり，虚血耐性の病理発生を研究ずる有用な実験機材であると思われた。