開花特性と遺伝構造が示すササ類（ォモェザサ）の非一回繁殖性

摘要

ササ類は開花.結実の豊凶がきわめて明暸であり、加えて生涯で一度のみ繁殖する一回繁殖型植物と考えられて きた。一方、ササ類は個体群の遺伝構造の把握が困難であったため、これまで一回繁殖性について検証されることはな かった。しかしササ類の特異的な繁殖特性を解明するにはまず一回繁殖性の検証が不可欠である。そこで、ォモェザサ 個体群において遺伝構造を調べると共に、4年間の開花パターンの調査を行い、一回繁殖性の検証を行った。その結果、 開花桿は全て同一ジェネットに属し、ジェネットの占有面積は3 ha以上に及んだ。しカゝし、同一ジェネット内の稈が全 て開花したのではなく、大別すると、全ての稈が開花していない範囲、開花稈と非開花稈が混在している範囲、全ての 稈が開花している範囲がそれぞれ、同一ジュネット内に同時に存在した。全ての稈が開花した範囲のうち、開花後に全 ての地上部が枯死した範囲もあつたが、翌年以降も稈が生残する範囲もあった。開花後に地上部が枯死した範囲の地下 茎からは、翌年以降に新しい稈ゃ花序が再生する現象がみられた。開花力起こる範囲は年毎に変化したが、同一ジエネ ットに属していても4年間でまだ一度も開花していない範囲も存在した。また、ラメット間の生理的統合を調べるため、 炭素安定同位体(~(13)C)を用いてトレース実験を行った結果、非開花稈から地下茎で繋がった開花稈へ~(13)Cが　転流していた。 これらのことから、研究対象としたォモェザサは一斉に開花はするものの、必ずしも一回繁殖型の生活史を有していな いことが分かった。