暑熱暴露時のラットの脳温の部位差と酸化ストレスへの影響

摘要

我々は平常体温のマウスの脳において、抗酸化酵素であるsuperoxide dismutase (SOD) 2のタンパク発 現が脳底部に比べて脳表部で多いことを明らかにしている（p=0.001;脳表部1.3±0.11、脳底部0.3 ±0.05)。さらに、暑熱暴露後のS0D2のタンパク発現を調べたところ、脳表部では正常体温時に比べて減 少していたが（p=0. 001；正常体温時1.3±0.11、高体温時0. 8±0.05)、脳底部では差が見られなかつ た（p〉0. 05 ；正常体温時0. 3±0. 05、高体温時0, 3±0. 03)。この現象の生理学的意義は明らかではない。 先行研究では、暑熱暴露により脳におけるSOD活性が低下すること、reactive oxygen species (R0S)の 産生が増加することが明らかにされている。そこで本研究では以下の実験仮説をたて、その検証を行つ た。(1)脳表部は暑熱暴露時に温度が上がりやす)く、その防御機転の一つとして抗酸化酵素が細胞中に多 く含まれている、②脳底部には暑熱暴露時に温度の上昇を防ぐなんらかのメカニズムが存在し、抗酸化 酵素は少なく、暑熱暴露の影響も小さい。実験では、高体温時のラットの視床下部おょぴ海馬の温度を 直接計測し、免疫組織化学的手法により抗酸化酵素およびR0Sの分布を調べた。