伝統民家における植栽と庭の機能－ヰ部地方の郷土史を対象とした調査研究－

摘要

研究目的　 都市化が進んだ現代において、個性ある景観や地域らしい町並みが失われつつある。 従来、我が国では地域の気候風土を背景に個性や統一感のある町並み、景観が形成されていた。 特に郊外では屋敷内外の植栽が景観形成に大きな役割を果たしていた。 当時の植栽の役割は、防風や日射遮蔽、食物栽培など生活に必要な機能が景観形成に深く結びついていた。 現代では、住宅の外観や造園デザインにコンセンサスはなく、混乱した状態が続いている。 しかし、温暖化の抑制やCO2濃度の削減、動植物の生態系ネットワークの再構築など、個人庭が社会や環境に貢献できる可能性は大きい。 個人庭や公共空間における造園のあり方を見直す上で、気候風土に根ざした伝統民家の植栽のあり方は参考になりうると言える。 ∠そこで、郷土史（市町村史）を対象に、各地域の近世民家において、どのような庭の作り方や使われ方がなされて来たのかを明らかにし、今後の地域性をふまえた植栽計画を考える上で求められる知見を抽出する。