有機ハロゲン化合物の微生物酵素変換：精密反応解析による新しい分子論展開と応用

摘要

有機ハロゲン化合物というと，化学工業で生産される人為起源化合物が真っ先に思い浮かぶかもしれない．しかし，有機ハロゲン化合物には，生物が生合成するものや火山活動で生成するものなど天然物も多く，現在3800種を超える天然の有機ハロゲン化合物が同定されている．藻類など海洋生物の産物が代表的だが，ほかにも種々の微生物，植物，動物が，有機ハロゲン化合物を生産することが知られている．塩素や臭素を含むものが多いが，ヨウ素やフッ素を含むものもあり，また，脂肪族もあれば芳香族もある，したがって地球上には，化学工業の発展以前から，多様な有機ハロゲン化合物が存在していたと考えられる．一方，これに対応するように，有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン反応を触媒したり，ある有機ハロゲン化合物を別の有機ハロゲン化合物に変換するバラエティーに富んだ酵素が生物進化の過程で作り出されている．