エンバクのアペナンスラミド’

摘要

絶対寄生菌であるPuccinia coronata f. sp. avenaeによってひき起こされる冠さび病はエンバク（Avena sativa L．）の重要病害であり，エンバクを栽培しているはとんどすべての地域でその発生がみられる．本病原菌には病原性の異なるレースの分化が認められており，エンバクの品種は各レースに対して特異的な抵抗性（あるいは羅病性）を示す．この特異性は病原菌がもつ非病原性遺伝子とエンバクがもつ抵抗性遺伝子のある特定の組み合わせによって決定される．真山らは，病原菌レースとエンバク品種の不親和な組み合わせ，すなわちエンバクの抵抗性により感染が成立しない場合にこの抵抗反応の進行と並行して生成蓄積する物質を見いだした．この物質には冠さび病菌に対する抗菌性が認められ，エンバクのファイトアレキシンとして化学的な研究が進められることとなった．以下，このエンバクのファイトアレキシンの化学とその誘導機構に関するいくつかの知見を紹介する．