ヒノキ，ヒノキアスナロ漏脂病羅病木における漏脂病患部と昆虫の食害との関係

摘要

ヒノキ，ヒノキアスナロ（アテ）漏脂病の発生にヒノキカワモグリガやスギカミキリの食害が関与しているかどうかを明らかにするために，漏脂病権病木で樹脂流出部や樹脂のうと食痕との関係を調べた。 石川県および茨城県の調査地においてヒノキあるいはヒノキアスネロの擢病木を伐倒し，樹脂流出部や食害部の表面の状態，食痕や樹脂のうの有無を調べ，また解剖観察を行った。 解剖観察で食痕と樹脂のうとは明確に区別された。 ヒノキカワモグリガの食害部では村内に傷害組織を伴う場合が多く，樹脂流出は少量であった。食害部以外の樹脂流出部のほとんどには師部に樹脂のうや多層の傷害樹脂通が認められ，漏脂病の患部と判断された。 こうした部位では村内に傷害組織を伴う例は少なく，樹脂流出が多量である場合が多かった。樹脂のうが観察された部位にヒノキカワモグリガ食害の痕跡が認められることはごく少数に限られ，また食害が樹脂のう形成に直接関係していないことが示された。 漏脂病の発病にはヒノキカワモグリガの食害はほとんど関与していないと考えられる。 スギカミキリの食害部にはしばしば樹脂のうの形成および多量の樹脂流出が認められた。 スギカミキリ食害が漏脂病発病に関与しているかどうかは解剖調査からは結論できなかったが，スギカミキリ食害の発生件数は少なかった。