DNAマーカーを利用した南アルプスの絶滅危倶植物タカネビランジ（Silene akaisialpina）における鳳風三山と北高産個体の識別とその教材化

摘要

南アルプスの鳳風三山（地蔵ケ岳、観音岳、薬師岳）および北岳の各山塊に自生する絶滅危惧植物タカネビランジ（Silene akaisialpina）計38個体について，SSR分析とクラスター分析により個体識別を試みた。12種類のプライマーで多型が検出された。このうち，Sb6－342プライマーにおいて，北岳産個体（シロバナタカネビランジS.akaisialpina f. leucantha）すべてに約1000 bpの特異的なバンドが検出された。このバンドは鳳風三山産系個体では欠失し，タカネビランジの種内分類群，すなわちタカネビランジ（S. akaisialpina f.akaisialpina）とシロバナタカネビランジS. akaiialpinaf. leucantha）を識別するDNA識別マーカーとして有効であると考えられた。鳳風三山系個体と北岳の個体の遺伝的距離および同一マーカー数の調査結果から，観音岳の個体の遺伝的多様性が最も高かった。薬師岳および北岳の個体の遺伝的ばらつきは低かった。地蔵ケ岳産個体群が北岳産個体群と最も隔たりがあり次いで観音岳であった。薬師岳と北高の個体間の遺伝的距離は比較的近いことが分かった。クラスター分析の結果，4つの山塊のタカネビランジは，クラスターⅠ（鳳風系1），とクラスターⅡ（鳳風系2、北岳系）に分かれた。そしてクラスターⅡの下位のクラスターⅡ－2（北岳系）にDの個体がすべてまとまった。実験結果をもとに，農業高校の科目「課題研究」での実施を想定した実験系の教材化（学習指導計画）を試みた。また，実験系について生徒を対象としたアンケート調査し理解度を測定した。