放牧地生態系の持続的管理において主要な概念の整理とその応用： モンゴルの放牧地生態系を例として

摘要

放牧地生態学研究の最終目標は，放牧地管理および生物多 様性保全の観点から家畜放牧が自然環境とその変容に与える影響を予測することにある（Milchunasら1988 ； Diazら 2001；Vesk、 Westoby 2001；Veskら2004 ； Diazら2007)。 学問としての歴史は長く ，放牧に伴う植生変化のパターンお よびプロセスの解明，地域または景観スケールでのそのパ ターンおよびプロセスの一般化，最終的には放牧地生態系の 放牧に伴う植生動態を記述する適切な概念モデルの再評価と い形で大きな進歩を遂げてきた（Briskeら2003)。しかし， 放牧地生態系を捉える考え方は二極化しており，理論に基づ ぐ考え方に厳密にとらわれ過ぎることで，現実の系に即した 管理への応用が十分に達成されていないのが現状である (Briskeら2003)0つまり，現在の放牧地生態学はこの問題に 包括的に対応した管理論を提供できていない。