水土文化への誘い（その7）－水土文化の集め方，聴き方－

摘要

筆者は，民俗学研究者としてはまだまだ経験が不足している。 そもそも東洋史学が専門であり，日本の農村を対象にしたのも，民俗学を学びはじめたのも，フィールドワークを始めたのも，たかだか10年ほど前からである。 初学者に近い者であり，水土文化調査の具体的方法論に最も近い本回を担当しなければならないことに非常に心苦しいものを感じている。 しかしながら，勤務の必要性から，初学者が色々と試行錯誤を続けながら現在までやり遂げてきたこの10年の経験は，学生のころからきちんとした指導、薫陶のもとで学問訓練を積んできた専門家の経験より，もしかしたら専門外である農業土木技術者の読者には参考になるかもしれない。 そこで，本回は「水土文化の集め方、聴き方」なるものをテーマとするが，一般的、教科書的なことはさしおいて，筆者個人の経験から，日本農村の文化について学び，実際の農村に入り，調査、採取を進め農村を理解し，未来に繋げていこうとする過程を紹介し，今回の講座テーマが要請することに応えようと考える。初学者10年の活動記録である。