生物多様性国家戦略と環境省の自然再生事業について

摘要

日本には，深海の生物や土壌中の微生物から空を飛ぶ鳥まで，9万種以上の多様な生物が生息している。 私たち日本人はこうした生物の多様性をあまり損なうことなく，暮らしや営みの中でその恵みをうまく利用し，さまざまな知識や技術，豊かな感性を培ってきた。 しかし，明治以降の近代化，とりわけ戦後の歴史が経済や利便性を向上させた反面，国土の風景を貧弱にし，自然を破壊し，数多くの生物種を絶滅ないし減少に追いやって，自然との関わりにおける人々の生活の豊かさを奪ってきたことも否めない事実である。 近年，日本の社会経済は成長から安定化に向かい，社会全体の環境意識が急速に向上するなど，時代は大きな転換期にさしかかっている。