農場実習における大学生の知識習得,意識変化に影響する要因の分析

摘要

近年，食育や現場体験型学習の推進を背景に，小, 中学生だけでなく大学生においても農業を題材とした 実習教育の需要が高まっている.大学生を対象とした農業関係の実習を大きく分ける と，農村をフィールドとして農家らと交流しながら農 業に従事する農村体験型実習と，大学の附属施設である大学農場にておこなう農場実習の2タイプがある. これら2タイプの農業実習であるが，それぞれ一長一 短が存在している.農村体験型実習は，農村をフィー ルドとして農家から直接指導を受けるため，農家の農 業に対する生の声を聴くことができるとともに，生活 の場である農村を体験することができるため，学習の 内容が幅広いという長所がある一方，運営を担当する 教職員の労力的負担や大学側の財政的な負担が大きレヽ 点も指摘されている（宇野ら，2009).農場実習は，自 大学の大学生の実習教育を主目的の1つに整備され， 実習用の設備や人員が整っている大学農場で実施する ため，効率的に実施できる点や専門性の高い内容を指 導できるといつた長所があるが，農村と切り離された 現場で学ぶことになるため，学びの幅は狭くなりやす いという短所がある.本研究では，附属農場にておこ なわれる農場実習に着目する.近年，大学教育では， 教育関係共同利用拠点制度（註1)が施行され，大学農場を含めた大学附属の教育施設の共同利用が進めら れている.教育施設を共同利用する意義として，大学 ごとに施設を独自保有する必要がなくなり経済的負担 を軽減できるほか，これまで施設を利用することのな かった大学にも利用機会がうまれ，幅広い大学の専門 教育や教養教育の充実化に貢献できる点が指摘されている（広島大学，2014).このような状況から，自大学 の農学部の専門教育を中心に担つてきた大学農場にお いても，農学部以外の幅広い大学のニーズに対応した 農場実習を担うことが求められている.そのためには， これまで対象としてきた農学部生だけではなく多様な 専門の大学生に対応した実習プログラムを構築するこ とが必要である.