昆虫病原性ウイルスの害虫防除への利用技術

摘要

害虫の生物的防除素材である昆虫病原性ウイルスの中で最も実用化が進んでいるバキュロウイルスについて，その形態ならびに感染特性について解説するとともにバキュロウイルスの害虫防除への利用技術開発に向けた国内外における研究の歴史と現状ならびに今後の課題について述べた。 エイズ，C型肝炎，鳥インフルエンザ，コイヘルペスなどウイルス感染による病気が話題に上る機会が増えている。 ヒトに感染するウイルスはもちろんであるが，農林水産業においても作物，家畜，魚介類，カイコやミツパテに感染するウイルス病をいかに防ぐかは重要な課題である。 やっかいなものという印象が強いウイルスであるが，農業の役に立つウイルスも存在する。 その一例が昆虫に特異的に感染するバキュロウイルスである。 本稿では，昆虫病原性ウイルスであるバキュロウイルスの害虫防除への利用について紹介する。