ナタネ、バイオマス関係の研究の現段階と農業経済学の課題

摘要

経済学は人間活動のうち，市場に取り込まれた部分における運動法則を主たる研究領域とするものである。市場が取り扱いにくい領域に関しても，擬似的な市場を想定して法則化することが多いが，これも経済学が基本的に市場を介した人間活動を研究対象とすることによる。近年，国家にょる市場への介入に対する批判が多くなされ，その過程で国営事業の民営化の議論が多く展開されたことも，経済学が本来持っている市場を中心として人間活動を捉えるという世界観の現れという側面がある。一方で，資本主義経済が展開する過程で，経済をより望ましいものへ方向付けするために，国家が経済へ介入することを進めた歴史がある。国営事業の民営化の議論は，国民経済の多くの領域で政府が関与するという在り方に対する見直しと，それを後押しした学説に対する批判として捉えられる。一方で，農村経済は必ずしも経済学一般で捉えきれなも、性格を持つ。それは農家および農村経済は，自給的な性格を内包しながら市場活動を行うという特徴を持っているからである。このため，往々にして経済学の一般理論から外れる部分が生じる。とくに日本の農業構造は，戦前、戦後を通じて工業と比較して停滞的であり，このため，この停滞する要素を分析することが農業経済学の課題として取り組まれてきた。一言で言えば，農村の人間活動においては，市場に取り込まれていない部分が多く，よって農業経済学には市場に取り込まれていない領域を網羅する視点，方法，理論が求められてきたといえるだろう。