植物の根に関する諸問題〔154〕 －花きセル成型苗の生育様相の解明に基づいた熱融着性ポリエステル繊維固化培地による若苗定植法の開発－

摘要

近年，野菜や花きの苗生産の現場では，セル成型トレイ（以下セル）を用いたセル育苗が増加している（安藤1989，古在ら1990）．セル苗はきわめて小さい容量（2～50mL）のセルで密植して育成されるために，従来の鉢育苗とは異なった育苗管理および着水分管理が要求される（Armitage1998，Styer、Koranski1998）．セル苗生産にあたっては，可能な限りセル容量が小さく，セル数の多いトレイを用いることによって，土地利用効率や輸送効率の向上と培地コストの削減が可能となり，生産効率が向上する．現在，セル苗生産の効率を高めるため，セル容量が小さいトレイ，すなわちセル数の多いトレイを用いる方向に移行しつつある．しかし，セル容量が小さいほど苗の成長が早くから停滞し，成長が抑制された小さな苗は移植後の成長も遅れることが，トマト（Kembleら1994），ピーマン（Weston1988），スイカ（Hall1989，Vavrinaら1993），メロン（Maynardら1996）などで報告されている．