景観との多元的な関わりを通じたふるさと意識の醸成

摘要

ふるさと意識とは，地域に居住した経験を有する者の 間で共有される，地域に対する愛着や誇り，帰属意識の 総称である。現在，農山村地域では，過疎化や農林業の 衰退，集落機能の低下を背景に，ふるさと意識の希薄化が問題となっている（小田切，2011)。また，東日本大 震災を契機とした津波被害や原発事故による長期的な避 難，さらには高台や他地域への移住を強いられている被 災地でも，ふるさと意識の維持が困難になる場面が多く 想定される。ふるさと意識の希薄化が引き起こす問題 は，単に愛着や誇り，帰属意識を失い，居住者が精神的 ストレスを抱えるといった精神的、心理的問題だけでは ない。協働による地域づくりをも阻害してしまう危険性 があるとの観点からも問題である。ふるさと意識の酸成 は，農村計画学が取り組むべき重要課題の一つだと考え られる。