傾向スコアマツチング法による 農地,水,環境保全向上対策のィンパクト評価一北海道における共同活動支援を対象として一

摘要

わが国の農地や農業用水等の農村地域資源の保全管理 は，農業集落を中心とした共同活動により行われてきた。 しかし，近年，過疎化，高齢化，混住化による集落機能 の低下により.農村地域資源の適切な維持管理が困難になってきている。このような状況に対し2007年より「農 地,水,環境保全向上対策」（以下，向上対策）が導入 されている"1。この対策は（1)資源の適切な維持保全， 施設の長寿命化，生態系保全,景観形成を目的とする地 域ぐるみの共同活動（共同活動支援）と（2)農業者ぐ るみで化学肥料,化学合成農薬を大幅に低減するなど環 境保全に向けた先進的な営農活動（営農活動支援）を実 施する活動組織を支援する2段階から成り立つている。 特に前者は，農業者だけでなく，地域の住民や都市住民， NPO等の非農家グループを含む地域ぐるみの共同活動 へ支援を行うものである。このように向上対策は.資源 の保全や環境保全型農業を推進する農業集落の構成員を 中心とした活動組織への直接支払制度となっており.そ の効果について定量的な評価を行う必要がある。しか し，集落の向上対策への参加要因については一定のコン センサスが存在するが,その影響については事例 分析や事後評価が中心'となっており，統計学的 手法によって向上対策の効果を測定した研究は見あたら ないお)。