子牛の疾病を考える －母午と関連した子牛の疾病を理解する－

摘要

我が国における繁殖和牛の飼育方法は，少頭数飼養では伝統的な給餌方法が，大規模農場では機械化された給餌方法が取り入れられ，北海道から沖縄まで地域性に富んだ飼養形態が存在する。近年飼料の高騰や子牛取引価格の低迷が続くなか，飼養者の高齢化も追い討ちをかけ，新たな技術を生かした飼養法とはいいがたく，旧態依然の方式が続いている。その多くは乳期（授乳期，妊娠維持期，妊娠末期）を無視した一律給与，継続性に乏しい粗飼料給与など，栄養面を度外視した飼養管理が散見されるのも事実である。このような背景には，よき指導者が現場に不在であったこと，飼養意欲が鈍化してきたこと，小規模経営が多く技術革新が定着しなかったことが一因となっている。その結果，病傷事故記録分析からは，飼養環境や給餌法に起因する疾病も多く，母乳性自痢もそのひとっと思われる。一方，今まで疾病ととらえられていたものが生理的，あるいは季節性によるものなど，すべて疾病とするには無理な現象もみられる。